彼女&彼氏と一緒に見てはいけない?:『恋の渦』@新宿K’sシネマ

三月某日

昨年の夏に公開されて以来、ずっと見たいなと思っていたのになぜか見る機会がなかった『恋の渦』をついに見た@新宿K’sシネマ!

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なんで見たかったと言うと、『モテキ』を見ておもしろかったので他の大根仁作品も見たいと単純に思ったからなんだけど・・・そうして気にしている間に作品情報や評判がツイッターやらネットで伝わってきてますます見たいと思うようになっていた。伝わってきた情報は、脚本の元になっているのは劇団ポツドールの戯曲『愛の渦』(第50岸田國士戯曲賞受賞)であること、大根仁のワークショップの一環として制作された自主映画であること、自主制作ながら口コミでどんどん評判が高まっていったことなど。

まず、作品の至る所に見られる“あるある”ネタ。テレビを見る習慣がない(自宅にテレビがない)ので、つい最近までDQNの意味すら知らなかったんだけど、こういう人種(と言うか、どんな属性でも)を外側から見るとおもしろく映るもの。この作品ではそれが誇張でもなくただただリアルに描くことによって強烈な風刺になっている。登場人物のファッションと部屋のインテリア、そして言葉使い。そこに人物それぞれの性格と微妙な心情の機微が表れる。それだけでなく彼・彼女らの本音と嘘と下心が透けて見える。登場人物は主にDQNでゲスなキャラだけど、そうじゃない人でも似たような行動とったり、台詞を吐いたりしたことあるよね。そこが身につまされる。己自身の恥部を曝け出しているような恥ずかしさに顔を覆いたくなる。

一方、確かにどいつこいつもゲスではあるけど、愛おしいキャラでもある。とくにダメ男ダメ女組みのオサム、ユウタ、ユウコ、トモコ達は見ていてイライラするのに、どうしても憎みきれない(笑)。それぞれ優しさや弱さが見えるからかな。それに・・・(ネタばれになるけど)・・・一番イケてないオサムとユウコが最終的に一番幸せそうで、逆に一番イケてる(けど一番のゲス?)ナオキが悲惨な結末を辿るのは皮肉である。その点、ちょっとした救いではあるけど、個人的には最後までとことん救い無く終わった方がインパクトあるのになぁ・・・とも思った。

演技と演出があまりにもリアリティがあって自然なので、まるでドキュメンタリーのようにも見えるが、否しかし、よくよく考えればあの台詞をあのタイミングであのカメラアングルで、っていうような点が実に緻密に計算されているし、そこに大根仁の手腕が存分に発揮されている。その辺のディテールを確認するためにDVDで見返したいところだけど、今のところDVD化される予定はないとのこと。ならばもう一度見に行ってもいいかな。

映画を見た人同士で、登場人物の誰が好きとか嫌いとか、あの台詞や行動には共感できるとか許せないとか、感想言い合ったりするのが楽しそう。そこで繰り広げられる「オレ論」や「アタシ論」にもまた本音と建前と嘘、そして虚栄や見栄が表れたりしてね。この映画を反面教師として異性に接する上で「この場面でこうした行動・態度とっちゃダメだな」とか、逆に「相手はこんな時こんな事を考えているのか」とか勉強になる部分も多いよ。

ちなみにオレが劇場を訪れたこの日、上映後にタカシ役の澤村大輔と“男”役の松下貞治のふたりがサプライズで舞台挨拶に登場。撮影裏話を披露してくれたよ。「脚本の完成度が高いからアドリブはほとんど無し。アドリブで演じた場面もあったが、いっさい採用されてない。ただしユウコの『携帯忘れた侍』というセリフだけが唯一のアドリブ」「大根監督は『この人なら演じられるだろう』という基準で配役したが、その役者を見抜く力はさすが」「ユウタ役だけはワークショップ参加の役者に適当な人が見つからなかったので別に探した」「東京では人気を博しているが関西方面はまだ評判が浸透していないのか集客がイマイチ」等々。おふたり共気さくそうな感じだったな。特に澤村さんは人が良さそうに見えて、タカシ役と被って見えたよ(笑)。

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さて、『恋の渦』の脚本を手がけたポツドール三浦大輔が自身で監督した『愛の渦』が現在公開中。この作品も男女の人間模様、しかも乱交パーティーが舞台に描いているものらしい。いったいどんな作品になっているのか実に楽しみ。近々見に行く予定。

最後に・・・『恋の渦』は友達同士で見るのはいいけど、彼&彼女と一緒に見に行っちゃ絶対ダメでしょ?