生と性を謳歌しよう:『セッションズ』@飯田橋ギンレイホール

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三月某日

『危険なプロット』との二本立だったので、まったくの予備知識無しで見た。首から下のほぼ全身が麻痺した障碍者がセックス・サロゲイト(セックス代行人)を雇い童貞を捨てるために奮闘するという、実話をもとに作られた映画だ。テーマだけでも興味をそそられるよね。

重度の障碍者が主人公でシリアスなテーマだけど、悲惨さよりも可笑しさを前面に置いたところが巧い。とはいえ、裏ではしっかりと障碍者の抱える性的悩み、彼を取り巻く社会の問題、セックス・サロゲイトという職業がいかなるものかといったタブー視されがちな点もしっかり真面目に描いている。とくに映画の中に登場するセックス・サロゲイトが利用者(主人公)を冷静に観察してセッションについてレポートを取るなど、自分の仕事に誇りを持つプロであることが強調されている。「売春婦とは違うの」という台詞も何度か聞かれた。

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話が逸れるが…確か最近の日本映画でも身体障碍者専門デリヘル嬢を描いた映画あったよな(調べたら『暗闇から手をのばせ!』だった)。もしかして『セッションズ』のパクリか、あるいはこの映画から着想されたのかもしれない。見比べてみたい。

『セッションズ』に話を戻して…印象に残ったのは、全身麻痺という究極のハンディキャップを負いながらも主人公がその限られた世界の中で“生”と“性”を謳歌しようというポジティヴさ。そして“性”は“生”の一部であって切り離すことはできない、というか切り離して考えることが不自然なのだということ。

もうひとつ印象に残ったのは主人公、マーク・オブライエンの人柄と機知と皮肉に富んだ会話だな。介護している女性(だけでなく男性や、関係する人たちの多く)が彼の人間的魅力とユーモアに惹かれていく。詩人という言葉に鋭敏な職業柄なのか、生まれもっての不遇な体験からなのか・・・たぶんその両方がそうさせるのだろうけど、ユニークな言葉の発想力と粋な話術に感心した。「人の魅力は外見だけに限らないんだなぁ」と勇気づけられる。オレもああしたセンスのいい話術を身につけたい(笑)。

役者陣も良いよ。主人公のマークはジョン・ホーク。『ウィンターズ・ボーン』のティアドロップ・ドリーだよ!! あまりにも異なる役でまったく気づかなかった。ってか、オレ外国人役者の名前や顔とかあまり覚えられない(苦笑)。セックス・サロゲイト役がヘレン・ハント(有名女優? スミマセン、知らなくて)。そして、神父役のウィリアム・H・メイシー。『ファーゴ』で冴えない夫を演じたアイツか! いい味出してるぜ。