凶暴な儀式:SWANS@渋谷O-EAST

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一月某日

 

スワンズと言えば、ニューヨーク地下活動組の闇の帝王。若い頃に夢中で聞いていたソニック・ユースとは同じシーンに属し、互いに交流が深かった。当時ジャンクと呼ばれた、今で言ういわゆるインダストリアル・ノイズも初期のソニック・ユースと共通する。もちろん、その名は聞き知ってる、だけじゃなくアルバムも何枚か持ってるけど、ソニック・ユースほど熱心に聞かなかった。どうして熱心にならなかったのか自分でもよく思いだせない。たぶん彼らを最初に耳にした当時(20代前半)は、陰鬱とした重々しさ(と当時は感じた)が気分的に響かなかったのと、ソニック・ユースが華々しいメジャー・デビューを飾ったのに対し、彼らが地下にとどまっていたせいもある。その後バンドは解散しちゃったし。オレとしてはすっかり過去のバンド扱いになっていた。再結成時にも「どうせ昔の名前で…」的に捉えていて、新作は完全にノーマークでした(汗)。

そのスワンズの再評価がどんどん高まっているみたい。再結成後の新作の充実っぷりから過去の再評価に至ったのは間違いない。で、昨年新作をリリースしての来日公演。おそらく前回(再結成後の来日公演。オレは見てないんだけど)のパフォーマンスの素晴らしさが口コミで広がって、「スワンズやばいぞ、見とけ」ってな情況になってるんじゃないか。かく言うオレも「ならば見るしかあるまい」って感じで来た次第。で、スワンズを見くびっていたことに気づかされた。過去の栄光にしがみついた劣化バンドどころか、現役バリバリで深化続けるバンドだった。「闇の帝王」、「スワンズやばい」って噂はガセじゃなかったよ。 

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会場のO-EASTは渋谷って場所柄のせいかなんかチャラい(勝手な)印象がある。けど、この日集まったオーディエンスはなかなかに厳つい奴らが多かった。これから繰り広げられるであろう凶悪凶暴な“儀式”を予見させる物騒な空気が漂っている。テンション上がってきた。

まずはパーカッション担当の二人が登場し地響きのようなサウンドで奏でる。そこにギター(もう一台はスチール・ギターか?)やベースが加わりサイレン風ドローンが重なる。冒頭からすでに延々と続くドローン。いつ終わるともわからないような反復。そこに登場したマイケル・ジラをはじめとするメンバーの風貌も筋金入りの恐さ。ヘルスエンジェルかよ(笑)。

当時ジャンクと呼ばれた、今で言ういわゆるインダストリアル・サウンドは鋼鉄のように重く強固だった。しかし無機質で冷徹な感じはしない。むしろ熱を帯びて轟々と煮えたぎっている。ミニマルな中にフリー・ジャズエスニックフォークロア的要素が時たま顔を覗かせるからかもしれない。ジラのヴォーカルも歌唱というより祈祷のようだ。体内で眠る原始的な叫びを呼び起こす。曲によってリズミカルになったりもするが、基本的にこのスタイルで最後まで押通した。

浮かれたポップや生ぬるい実験性とは遠くかけ離れた、いっさいの妥協を許さないガチガチのハードコア。音のデカさ、延々と反復する曲の長さ。すべてにおいてエクストリーム。これが本場ニューヨーク地下音楽か。その洗礼を受けた感じ。現代のヤワな日常を生きる身にはちょっとした苦行か、もっと言うなら拷問を受けてるようにさえ思えたよ(笑)。ジラの呪術的な歌唱も宗教儀式を連想させるところあるし。連想どころか、実際にそうした効果もあったりしてな。ライヴを見たその晩、オレの頭の中は耳鳴りが止まず、鈍器で殴られたかのようにグワングワンと回り続けていたのだった。

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Swans perform "Just a Little Boy" - Basilica Soundscape 2014 - YouTube