このリフを永遠に聞いてたいよ:『I Bet on Sky』/Dinosaur Jr.

 

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昨日はダイナソーJrの来日公演だった……が、当日朝まで仕事で行けなかった(起きられなかった)…。最新作『I Bet on Sky』の出来がすこぶるよかっただけに、この機を逃したのは痛い…。この歳になって日本のバンド(アンダーグラウンド以外のJポップとかもね)かなり聴くようになったんだけど、それでもオレの音楽人生でダイナソーほど強い影響を与えたバンドはいない(もしマイ・ブラッディ・ヴァレンタインが解散してなかったら…?! もしピクシーズが新作を発表しら…?!)。あれ?…なんかダイナソーが懐メロみたいな書き方になっちゃてるな。いやいや、そうじゃない。彼らは凡百の若手ロック・バンドなんか蹴散らしてしまうパワーと才能に溢れた現在進行形のバンドなのだ。このアルバムを聞けば説明するまでもなくおのずとわかるけどな。ってことで、今さらながらアルバム・レビューでライヴを見られなかった憂さを晴らす…と言うより、オレの「ダイナソー愛」の表明です。

 

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もう、冒頭からダイナソー節全開。単純なヴァース・コーラスの繰り返しなんだけどキャッチーなリフが耳をとらえて離さない。後半部に導入されるピアノとメロトロン(かな?)がさらに中毒症状を引き起こす。続く二曲目もたまらん。兇暴なギターの轟音に切なさとやるせなさを感じさせるメロディを乗せるダイナソーの真骨頂とも言うべき曲。後半、ドッタンバッタンするドラムの上でのた打ち回るギター・ソロもまぎれないダイナソー印。

彼らの特徴はいくつもあるが、やっぱり一番はなんと言ってもギター。もう本当に「ロックやるんだったら、こんな音が出したいんだよ」っていうような“抜け”の良いギターが次から次に繰り出される。しかもキャッチーなリフに乗せて。ああ、このリフを永遠にリピートして聞いていたいよ、ってなくらい破壊力がある。この点はハードロック的と言えるけど……なんか違う。

その違いはたぶん、殺伐さや刹那さ、歪み(ノイズ!)なんじゃないか。ダイナソーってかならず変なギター・エフェクトかけてくるし(J.マスキスはヴィンテージものレアものエフェクターのコレクターだ!!)。ファズとかフランジャーとかワウとか…その音色の違いを聞いてるだけでも楽しい。6曲目のワウワウのキレ良さなどギターを楽しんで弾いている感じが伝わってくる。それにしてもハードロックのように神経質な音へのこだわり、つまりクリアカット・サウンドじゃないんだよね。無造作に鳴らしたギターの歪んだ音、その不安定でぶっきらぼうな感じ、安っぽさや邪道っぽい感じはヘタウマとまで言わないけど(ってかむしろテクニックは高いし)、ハードロックとは対照的なパンクの雰囲気を濃厚に醸し出している。

そんな音を出す一方、メロディもなんとも言えない。基本はヴァース・コーラス・ヴァースという単純な構造。底抜けに明るくてポップなもの(3曲目、肩の力を抜いた軽快なリズム。ここでもリフがキャッチー)や、疾走感のある曲(7曲目、どんどん加速して一気に走り抜ける)など大半はロックしてるんだが、中でもオレはせつなくてほろ苦い曲が好き。4曲目はちょっとどんよりとした暗い導入からパッと明るく開ける展開なんだけど、ここにもやはり殺伐さや刹那さが感じられる。そう感じるのは曲の構造がシンプルだからか? せつなさがいっそう募るというより、むしろカタルシスが得られるというような…。それをまたあの頼りない、声量も決して大きくない上ずった高い声で歌うからたまらない。

そして…ダイナソーのもうひとつの個性がルー・バーロウ。セバドーやフォーク・インプロージョンを聞いてわかるとおり、彼もまたマスキスと比肩されるソングライターである(Jとルー・バーロウの分裂、脱退、確執、そして再結成等の話は長くなるので割愛。ちなみに…オレの記憶ではダイナソーはアルバムにバーロウの曲が必ず2曲は入る。それ以上でもそれ以下でもない。なぜ2曲なのかは謎)。今作では5曲目と9曲目がルー作。どっちも聴いてすぐにバーロウって分かるよね。5曲目は衝動的に心情をぶつけるストレートな曲なのに、ちょっと奇妙というかどこか分裂している。コード進行が変わってるのかな? 9曲目はレゲエっぽいリズムでアルバムの中では異質。でも、後半でマスキスのギターが絡んでくるとやっぱりダイナソー色になるな。

ラストではヘヴィなギター・ソロを存分に弾きまくっている。よく言われるけど、歪んだギターの音とメロディ、シンプルな構造、ヴォーカルの感じはやはりニール・ヤングを想起させる。この曲などもヤングの “コルテス・ザ・キラー”を彷彿させる。

本作を含めて再結成からすでにアルバムも三枚目を数える。再結成以降では間違いなく最高作、いや下手したらダイナソー史上でも最高傑作と言えるかも…それくらいこのアルバムは素晴らしいぜ。

 

オマケ:アルバムのに2曲目。このPV、何が言いたいのかまったくわからん…と思ってたけど、その無意味さ、やるせなさがなんともダイナソーらしいいいクリップに思えてきた(笑)。