“続く・・・”:『危険なプロット』@飯田橋ギンレイホール

三月某日

『危険なプロット』(監督:フランソワ・オゾン/2013年日本公開)。二度目。前回は1~2ヶ月前に早稲田松竹で見た。おもしろかったので、文学好きの友人を誘って再見した次第。

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こういう文学ミステリー&サスペンス(よく言う“ミステリー小説”じゃなくて、本とか文章とか芸術作品に謎が隠されているようなミステリーのこと)はオレの大好物。しかもこの作品、ミステリー&サスペンスとは言えコメディやメタフィクション的な要素もあっておもしろいよ。目の前で展開される出来事がフィクションなのか現実なのかわからなくなる。オレは最後までわからないまま終わったけど、その境界は意図的に曖昧なままにしているように思った。

読者=観客をどう惹きつけるのかという手法、手の内を観客にあらかじめ見せてしまう(著名な文学者を例に挙げながらの舞台・人物設定、言葉選び、表現法、文法、ストーリー運び・展開といった文章法のイロハもなかなか参考になる)。登場人物の振舞いやストーリーの展開は教師の作文指導や生徒(執筆者)の解釈と意図によってめまぐるしく変化する。場面ごとに“続く・・・”で閉じられ、現実にはまだ起きていないのに何かが起きることを読者=観客に期待させていく。そこにまんまとはめられてしまった(笑)。が、一番の見所は教師がどんどんと生徒の作文に没頭し我を失っていく心理描写かな。

そして、この生徒役の男の子(エルンスト・ウンハウアー)の顔がナイーヴっぽい雰囲気とあいまって超絶カワイイ。あまりにもカワイイ&キレイ過ぎて逆にリアリティに欠けるほど。この美少年を眺めるために映画見に来たって女がいても不思議はない(笑)。ちなみに、劇中では熟女趣味なところもあって、ややマザコンなところを匂わせてる。

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初見では気づかなかったんだが、オープニングやエンディングのタイトルロールで何度か「la maison」という文字が目について、ふと思った。「ああ、そうかこれは“家”の話だ」と。で、映画を見終わってすぐに原題を調べたら『Dans la maison(家の中)』だった。やっぱり!! そういう視点で見るとこの映画はかなり違って見える(邦題はセンスないな。分かりやすさだけを優先してありきたり)。ラストシーンで主人公の生徒と教師がアパートの部屋を眺めながら物語を仮想し合う。偶然にも、つい先日見た『恋の渦』の舞台は四つの部屋の中だけだった。その限られた空間と時間だけでもおもしろい物語を紡ぐことは可能なんだな。物語の題材はいつでもどこにでも転がっている・・・。