ガレージロック、いや全ロックンロール・ファン必見!!:『GET ACTION!!』@シネマート新宿

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三月某日

ティーンジェネレイトって覚えてる? 1993~1995年頃に活動していた日本のインディー・バンド。若い人の多くは知らないだろうな。ガレージ・ロック好きなら知ってるかも。

彼らの名前をはじめて聞いたのは、英国BBCラジオの名物DJ、 ジョン・ピールが彼の番組『ジョン・ピール・セッションズ』で紹介した時。当時オレはロンドンに滞在していた。知ってる人も多いと思うけど、ジョン・ピー ルは国内にとどまらず世界中から送られてくるテープを聞いては、有名無名問わず自分の感性で選曲してはラジオで流す人で、その自立性とセンスゆえに国民的 人気を誇り且つ多くのミュージシャンからも尊敬されていた。

あ る晩、いつものように彼の番組を聞いていたら、荒削りながらも激しくて活きのいいポップ・ソングが流れた。誰かも知らず無防備に聞いていたから、曲のディ テイルは覚えていない。英語の歌詞で何のことを歌っているかもよくわからない。ただ、一瞬でその衝撃に打ちのめされたことをはっきりと覚えている。無駄な 装飾一切無し。高圧高熱のエネルギーに満ち溢れた曲。当時まだ英語力が乏しかったオレは、ジョン・ピールの解説からバンド名だけをかろうじて聞き取った。 「TEENGENERATE」。日本の(一般的にはまったくの無名)インディー・バンドを英国の名物ラジオで聞く不思議。ただし、オレはそれが日本のバンドだとはまだ気づいていない…。

バンド名をメモし何度かロンドンのレコード屋で探したけど見つけられず、いつの間にかそのバンドのことは忘れてしまっていた。再び彼らの名前を耳にしたのは一時的に日本に帰国した時だ。そこでまたしても衝撃を受ける。知人から最近の日本のインディー/アンダーグラウンド・シーンでオススメのバンドを教えてもらっていたら、彼がティーンジェネレイトの名を挙げた。「あれ? 聞いたことあるぞ」。記憶を辿っているうちに、深夜、フラットの一室で受けたあの衝撃、メモ用紙に書きなぐった「TEENGENERATE」の文字が同時によみがえり驚愕した。日本のバンドだったのか!! さっそく東京のレコード屋で彼らのアルバム『GET ACTION』を買う。

そこにはまさにあの時ラジオで流れた、荒削りだがスピード感溢れるロケンロールが満載されていた。彼らの音楽をひと言で言えば「いかに高く飛べるか?」だ。長く引っ張ることなど眼中にない。どの曲も短く、凝縮された衝動を音の塊としてぶつけてくる。「こんなカッコいいバンドが日本にもいるんだ!」と興奮したものだ。しかし残念ながら、まさにその姿勢を体現するかのごとくバンドは3年に満たないうちに活動を休止、解散してしまう。彼らのライヴをついに見ることはないままバンドの記憶も薄れていった。

その存在すらすっかり忘れていた20年後の春、ティーンジェネレイトのドキュメンタリー映画『GET ACTOION!!』が制作・公開された。これはどうしても見なくてはなるまい。

映 画はバンドの再結成ライヴの模様から始まる。内容はオリジナル・メンバーを中心に関係者やミュージシャン仲間(国内外)らがバンドについて語りつつ、当時 の映像や写真が挟まれるといったオーソドックスなものだが、貴重なバンドの演奏姿と音源が聞けただけでもう満足。「ああ!! 思い出した、そうそうこの音 だよー」って感じで興奮しっぱなし(笑)。その興奮を促進させたのは90年代中期頃の東京のライヴハウス(クラブって言うの?)の雰囲気でもある。下北沢 シェルターとか新宿ジャムとか、今でもここらはアンダーグラウンドな空気が漂ってるけど、あの当時はもっとそうだったよな。混沌としててちょっとヤバそう な雰囲気。よく言えば筋金入りの音楽好き、悪く言えば社会不適合の音楽オタクばかりが集まっていたように思う。今よくあるクラブみたいに洗練なんてされてない。

一方、バンドの成り立ちや当時の活動状況、解散後~近況についても実に興味深かった。「世界中のレーベルが音源を奪い合う、凄いバンドが日本にいた!!」という宣伝文句にあるように、インターネットもYouTubeもない時代、日本のロック・バンドが海外ではほとんど認知されていなかった頃に欧米でツアーを敢行、しかも短いツアーではなく、年間80本 もの日程をこなしていく。日本よりむしろ海外での認知度が高かったというのも頷ける(当時海外で認知されてた日本のロック・バンドって、ティーンジェネレ イト以外ではボアダムズ少年ナイフぐらい?)。だからオレが最初に彼らの名を知ったのが『ジョン・ピール・セッションズ』だったことは単なる偶然ではな かったのだ。

速射砲のような激しい演奏と曲のスタイル。ティーンジェネレイトをあえてジャンル分けするなら、ガレージ・ロックあるいはパンク・ロックってことになるだろう。しかし、(映画の中でも言及されていたが) 彼らはロケンロールのツボというかスピリットをがっちりと掴んで消化吸収し、自らの血肉に変えていた(前身のアメリカン・ソウル・スパイダーズもカッコい いぞ)。見た目だけのガレージやパンクとは違う音楽愛と音楽知識の深さが曲に反映されている。メンバーの杉山兄弟は根っからの音楽マニアでレコードを貪り 聞いていたっていうエピソードがそれを証明する。激しい演奏と爆音だけど、思わず踊りだしたくなる、踊らずにはいられないようなポップでキャッチーな曲だ よね。ソウルフルな面も見られる。彼らが日本より海外で受けたことの要因も彼らがロケンロールの核をしっかり持っていたからだろう。

そのカッコいい曲と演奏とともにロックの本場で次々と旋風を巻き起こしていく彼らの姿はなんとも愉快痛快。こんなバンドが日本にいたことを誇りにすら思う よ。日本ロック史の一頁に刻まれる存在であることは間違いない。とくにガレージロック・ファンのみならず全ロックンロール・ファン必見です!!