午前0時のフィルム映写会@ギンレイホール:その一『シコふんじゃった』

七月某日

ギンレイホールで今年から始まった月いちイヴェント、『午前0時のフィルム試写会』。月に一度、過去の上映作品の中から人気を博したものを三本立てオールナイトで上映する企画。しかもデジタルではなく、あくまでもフィルムにこだわった上映。

今回の三本は『シコふんじゃった』、『ウォーター・ボーイズ』、『フラガール』。個々の作品は、個人的にはわざわざ映画館まで行って見ることのない映画(実際にこれまで見たことない)だけど、共通したテーマで三本をひと括りにすると興味も募る。しかもオールナイトという、ちょっと特別な、秘密の集まり的なイヴェントだとワクワクする。深夜、わざわざオールナイトで映画を見るために集まった人たち。映画への愛も感じるし、一体感もあっていいよね。

夜の11時から明け方5時近くまでの6時間という長丁場だったけど、飽きることなく最後まで楽しめた。ギンレイホールさん、月イチと言わずにこういうのもっと頻繁にやってください!!

 

一本目。『シコふんじゃった』。

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あったあった、この映画。懐かしいな。もう22年も昔なんだね。映画全体に80年代バブルの浮かれた空気がまだ残ってる。大学のサークル勧誘のシーンとか、清水美砂の眉毛の太さとかさ。オレはこの頃まさに大学生 だったから、この時代の感じはよくわかるよ。ちなみに舞台は周防監督の出身校、立教大学がモデルのようだ(映画では教立大学になっている)。この頃から周防監督の名前をよく耳にしたものだ。調べたらこの作品で日本アカデミー賞も獲ってる。その後『シャル・ウィー・ダンス?』で大ブレイクしたんだっけ? ちょうど相撲の若貴ブームが起きたのもこの頃か。ブームに乗ってこの映画は撮られたのか、それとも偶然だったのか、どっちだろ?

そしてモッくんと言えばシブがき隊。そして内田裕也の義理の息子、ってくらいしか認識なかったけど、今作の前、やはり周防監督の作品『ファンシィ・ダンス』で本格的な俳優デビューしたことを思い出した。あの映画では修行僧役で丸坊主、そして今作ではまわし姿と、いわゆる体当たり演技が話題になってたんじゃなかったっけ? ちょっと前に米国アカデミー賞外国語作品賞を獲って話題になった『おくりびと』は見てません。ヒロインの清水美砂も懐かしい。ヒロイン役を務めるくらいだから、あの頃、清水美砂ってけっこう人気あって、すごく好きだったことを思い出した! でもなんでだろ? この映画を見ても好きだった事実以外に、なぜ、彼女のどこが好きだったのかまったく思い出せない…(最近、まったく名前聞かないけどどうしてるのかな?)。竹中直人は、後の『シャル・ウィー・ダンス?』に繋がるシリアスとコミカルの振り幅を見せる演技。と言っても、コレは元々彼がお笑いでやってたことだけど。

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映画は熱血スポ根物語ではあるけど、シリアスではない、むしろおバカな青春コメディ。廃部寸前の弱小相撲部って設定だけでこの映画はすでに成功してる。笑わせ所も盛りだくさん。ただ、あまり現実味が感じられなくて爆笑とまではならなかった。弱小相撲部がテレビの取材で一躍注目されるとか、女子マネージャーが男装で大会に出場とかありえないっしょ? こういう現実離れしたプロットを見せられると恥ずかしくてこっちが耐えられなくなる。オレが笑えたのは、竹中直人のコミカルな動きとか、外国人留学生の屁理屈とか、小ネタの部分。

ラストの「ズルはもうやめだ」と言うシーンの清々しさは良かった。モッくん演じる若者の人間的成長と重ね合わせて、バブルに浮かれた80年代の経済的豊かさより人生の充実を求める価値観をさりげなく提示している。地道でも正直に真面目に生きる大切さね。

物語の印象は薄いけど、周防監督作品の軌跡確認としてとか、時代背景や役者陣とか、もろもろ懐かしくて楽しめた。